Gゲーム市場観測所
←NEWSへ戻る
業界

『RimWorld』の独自エンジン開発を支える「BRUTAL」が公開。ゲーム開発者に新たな選択肢

『DayZ』の開発者Dean Hall氏が率いるゲームスタジオRocketWerkzなどが、ゲーム開発向けフレームワーク「BRUTAL」をソースコードとともに公開した。C#を用いてゲームや独自のゲームエンジンを開発できる基盤で、商用作品にも無料で利用できる。 BRUTALは、Unityから独自エンジン「Waylith」への移行を進める『RimWorld』の開発にも活用されている。一方、一般的なゲームエンジンのようなエディタやレンダラーなどは備えておらず、開発者自身が必要な機能を組み合わせて構築することを前提としている。

既存エンジンへの依存を減らすための技術基盤

2026年10月15日、ゲーム開発フレームワーク「BRUTAL」が一般公開された。開発にはRocketWerkzなどが関わっており、ソースコードはGitHubで公開されている。

BRUTALは、ゲームを直接開発するためにも、独自のゲームエンジンを構築するためにも利用できるフレームワークだ。C#からネイティブAPIや各種ライブラリを扱うための仕組みを中核とし、メモリ管理、並列処理、数学処理、グラフィックス、音声、物理演算などに関するライブラリを提供する。

採用例の一つが、コロニーシミュレーションゲーム『RimWorld』だ。同作の開発元Ludeon Studiosは、Unityから独自エンジン「Waylith」への移行にBRUTALを活用している。開発元の発表では、Waylithへの移行後のテストで、Unity版に対して2~4倍のパフォーマンス向上が報告されている。

ただし、この数値は開発元によるテスト結果であり、すべてのゲームや開発環境で同様の効果が得られることを意味するものではない。

汎用エンジンではなく、必要な機能を組み合わせる設計

BRUTALは、UnityやUnreal Engine、Godotのような、開発に必要な機能を幅広く備えた汎用ゲームエンジンを目指していない。

専用エディタ、シーングラフ、完成済みのレンダラーなどは提供せず、開発者が必要なライブラリを選択して独自の構成を作る設計になっている。高い自由度を持つ一方、ゲームの設計や必要なシステムの実装、保守は開発者自身が担うことになる。

そのため、一般的なゲーム制作を手軽に始めたい開発者よりも、技術的な制御を重視するチームや、既存エンジンでは実現しにくい要件を持つプロジェクトに適した選択肢といえる。

商用利用は無料。ただし表示条件あり

BRUTALは商用ゲームを含めて無料で利用でき、売上に応じたロイヤリティも求めない。

ただし、独自のBRUTALライセンスには帰属表示に関する条件があり、クレジット画面などへの著作権表示、ゲーム開始前のロゴ表示、NOTICE.txtファイルの同梱が求められる。ロゴ表示を避けたい場合などには、別途商用ライセンスを相談する選択肢も用意されている。

また、ライセンスはMITライセンスをベースとしているものの、公開時点ではOSI(Open Source Initiative)の承認を受けていない。利用を検討する場合は、BRUTAL本体だけでなく、各ライブラリや同梱コンポーネントのライセンス条件も確認する必要がある。

市場観測

ゲームエンジンの選択肢は「使うか、自作するか」だけではない

BRUTALの公開で注目したいのは、既存エンジンに対抗する新たな完成品が登場したというよりも、独自エンジンを開発するための初期コストを抑える基盤が公開されたことだ。

独自エンジンの開発には、描画、メモリ管理、入力、音声、物理演算など、多くの基礎技術が必要になる。BRUTALはその一部をライブラリとして提供することで、開発チームが自社のゲームに必要な仕組みの設計や最適化に集中できる余地を生み出す。

また、ゲームエンジンの料金体系や利用条件、技術的な制約が開発判断に影響するなか、ソースコードを確認・変更できる技術基盤は、開発者にとって選択肢の分散につながる可能性がある。

一方、既存エンジンが提供するエディタ、アセット管理、開発支援機能、コミュニティなどを自前で用意する負担は残る。BRUTALのようなフレームワークが、すべての開発者にとって既存エンジンより有利とは限らない。

技術的な自由度と開発コストのバランス

BRUTALの普及を左右するのは、無料で利用できることだけではない。導入の難しさ、対応ライブラリの充実度、開発事例、ドキュメント、長期的な保守体制なども重要になる。

特に小規模な開発チームにとっては、ライセンス費用を抑えられるメリットと、独自の開発基盤を維持するために必要な人員・時間を比較する必要がある。

『RimWorld』のように、長期運営や大規模な拡張を見据えたタイトルで実際に活用されていることは、技術基盤としての可能性を示す事例だ。ただし、個別の採用事例だけで、ほかの開発チームにも同様の費用対効果があると判断することはできない。

今後の注目点

  • 採用タイトルの拡大: BRUTALを使う開発チームや商用タイトルが増えるか。

  • 開発環境の成熟: ドキュメント、サンプル、対応ライブラリ、開発者コミュニティがどの程度充実するか。

  • ライセンスの動向: 帰属表示の条件やOSI承認に向けた動きがどう進むか。

  • 独自エンジンの実用性: 『RimWorld』以外のタイトルでも、性能・開発効率・長期保守の面で成果が示されるか。

BRUTALは、既存エンジンを一律に置き換えるためのツールではない。開発者が自分たちのゲームに合った技術構成を選び、必要に応じて基盤そのものを制御するための選択肢として、今後の採用動向を追いたい。

出典

本記事は公開情報をもとに編集・整理したものであり、市場観測の項目は編集上の分析・考察です。

SHARE

この記事を共有する

REACTION

このニュースをどう捉えましたか?

「想定内・想定外」と「ポジティブ・ネガティブ」から、それぞれ1つずつ選択できます。 「判断できない」は単独で選択できます。

リアクションを読み込んでいます。

© ゲーム市場観測所

GAME MARKET OBSERVATORY